気候と除草剤の関連性
アメリカ・イリノイ州の「イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校」より、気候と除草剤の関連性をテーマとした論文が公開された。
研究者は「U.S. Corn Belt(アメリカコーンベルト)」と呼ばれる、トウモロコシ栽培が盛んな中西部の16の研究機関から過去30年分のデータを収集したところ、特定の気候条件になると除草剤の効果が弱まることを突き止めた。
気温が19℃以下、もしくは25℃以上になると、植物が発芽し成長を始めた後に使用する除草剤(グリホサート、フォメサフェン、メソトリオン)は雑草に対して効果を発揮しにくくなる。今回の研究ではこうしたことが起きる理由までは明らかになっていないが、研究者は他の論文の結果を参考にしながら、雑草は温かくなると成長が早まり、植物の代謝が促進されるため、除草剤が早く無効化されると仮説を立てている。一方で、気温が低くなると植物の代謝は遅くなり、植物内に入り込んだ除草剤が上手く作用せず、効き目が弱くなると推察している。
また、気温だけではなく降水パターンも除草剤の効果に影響を与える。植物は干ばつ状態になると、水分の蒸発を防ぐために葉や茎の表面を覆っているバリア(クチクラ層)を厚くすることから、除草剤の葉面散布は植物内に入りにくくなる。反対に雨が多いと、植物はストレス反応をみせ成長が遅くなるため、除草剤が植物内で移動しにくくなる。
気候変動が進行するこの時代において、除草剤の効果が気候条件によって大きく左右されることを考えると、従来の農法を見直し、より柔軟で環境に適応した方法を取り入れる必要があるのだろう。今後、農家は「気候に振り回される」から「気候を味方につける」転換を迫られているのかもしれない。
出典:Will agricultural weeds finally claim the upper hand in a changing climate? / University of Illinois College of Agricultural, Consumer and Environmental Sciences