
変化に強い生態系をつくる
最近、たくさんの農家からお話を伺う機会があるけれど、ほとんどの人が気候変動に困っていると口にしている。慣行栽培で柑橘を栽培している人は木々の元気がないと言うし、有機栽培で野菜を栽培している人は暑すぎて虫食いの被害が長引いていると言うし、水耕栽培を専門にしている人も夏場にハウス内が高温になりすぎて作物が枯れてしまうと言う。
comorebi farmとしては、こうした問題はある程度のところまでは準備ができたとしても、最終的には臨機応変に行動するしかないと考えている。
その理由を上手く説明できる事例が記載された論文が、アメリカの「コーネル大学」から公開された。
テーマになっているのは、気候変動によるフロリダカケスという鳥の習性の変化について。
この鳥はアメリカ・フロリダ州の固定種で絶滅危惧種に指定されているが、気候変動の影響で親鳥が育てる雛の数が25%も減少している。というのも、過去37間で冬の平均気温が約1.4℃上昇していることで、フロリダカケスは1週間早く巣を作るようになり、さらに蛇の活動時期が早まり、蛇が巣を襲うケースが増えているのだ。彼らは負けずに新しい巣を作り、卵を産み続けるものの、最終的には繁殖を諦めてしまう。
また、鳥類は繁殖をしようとした回数が多ければ多いほど、寿命が短くなるリスクが高まる傾向にあるため、フロリダカケスの個体数が減る可能性は高くなっている。それにもかかわらず、巣が襲われる可能性が高くなり、繁殖のハードルも上がっている。
こうして負の連鎖に陥ってしまっているのは、生態系が変わることによって、何が起きるのかが予測しづらくなっている点にある。
平均気温が温かくなることで、作物は枯れてしまいやすくなる。特定の虫や菌の生息期間が長くなり、虫食いや病気のリスクは上がる。こうしたことは簡単に想像できるため対策を練っておくことはできるけど、その先にどんな連鎖反応が待っているのかは予測しづらい。だからこそ、comorebi farmは臨機応変に行動するしかないと考えている。
きっと、これからの時代で農家として生きる人は、臨機応変に動ける力を身につける必要があり、加えて、予想外の出来事に強いレジリエンスのある生態系を築く必要もあるのだろう。
出典:Warm winters lead to increased reproductive effort, but lower reproductive success: Hidden costs of climate warming in a threatened bird
参考:Long-term study reveals warming climates threaten Florida scrub-jay / Cornell Chronicle
「Field Note」では、慣行栽培や有機栽培、自然栽培などの垣根を超えて、学びのあった内容、取り入れたいアイデア、視野の広がったインスピレーションについて書いています。comorebi farmは、農薬や化学肥料、除草剤、防腐剤を使わずに、身近にある資源を使って有機栽培に取り組んでいます。